資産運用はしないことと、税金を払わないこと(マネーロンダリング)

倉田老人「資産運用に成功する方法は何か?」

 

秋生「資産運用はしないことと、税金を払わないこと」

 

今回は私の好きな金融小説を紹介したいと思います。

 

本のタイトルはマネーロンダリング (幻冬舎文庫)です。

 

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方で有名な橘玲の処女作です。

マネーロンダリング (幻冬舎文庫)

マネーロンダリング (幻冬舎文庫)

 

資産運用はしないことと、税金を払わないこと

この本で最も印象に残ったセリフです。

 

日本での金融所得への課税は、大半が約20%です。

つまり、税金さえ払わなければその分だけリターンが高まるのです。

 

下手にハイリスク・ハイリターンに手を出すより、税金をいかに払わないか考える。
これも一種の資産運用だと、私は考えます。

 

秋生という特別なキャラクター

この本の魅力に、つかみ所の無い秋生のキャラクターがあります。

 

彼のキャリアは華々しく、そして途中から落ちぶれています。

 

就職したのは都市銀行ですが、デリバティブを学ぶ為にニューヨーク支店に移り、ヘッドハンティングされた上司と共に転職。

 

ニューヨークの都市銀行でデリバティブ・トレーダーをした後は、ヘッジファンドへと移ります。

 

けれど、このヘッジファンドの同僚は数学や物理のPhD(博士号)を取得したキレ者ばかり。

 

会話に付いていく事すら出来ず、秋生の華々しいキャリアは幕を閉じます。

 

その後は、貯め込んだ金で酒を飲み、薬を打ち、ヒッピー崩れのような人生。

このままではまずいと香港へ移住し、破産と隣り合わせのディーリングを行い、結局死ぬには多過ぎるが、生きるには足りないカネを持つ事に。

 

特別な欲望もなく、たまたま会った技術者がきっかけでモグリのファイナンシャルプランナーをやっている。

 

そんな人生とそっくりな、何ともつかみ所の無い、世離れしたような雰囲気を漂わせます。

 

金融の魔法

秋生は雑談の中で、金融の魔法使いはどんな魔法を使うのかと問われ、例え話を出します。

 

「たとえば、あなたがHIVウイルスに感染していると医者から言われたとする。80%の確率でエイズが発症して、5年以内には死亡する。そうしたら、どうしますか?」

こんな状態ならもちろん、残りの人生を楽しみたい。ですが、そのためには金が必要になるわけですよね。

 

そこで、秋生は続けて説明します。

 

あなたはたまたま、5000万円の生命保険に入っていた。そこに、僕のような金融屋がやってきて〈あなたの生命保険を買ってあげましょう〉と言う。仮にエイズの発症確率が80%、発症した場合の5年後の予想死亡率が100%とするならば、数学的には5年後に4000万円を受け取ることが期待できる。そこで、この4000万円の期待値から金利や手数料を引いて、たとえば3000万円でその生命保険契約を買うわけです。それを今度は、投資家に3500万円で転売する。

生命保険は他の生命保険と一緒にまとめられ、証券化される事で死なないリスクさえも平均化されます。

 

例えですが、これは金融の本質を突いていると思います。


この中で、損をする人はいない。
一人一人が役割を担って、それに対する利益を享受しています。

 

  • 本人は大金のある余生を享受し
  • 金融屋は手数料を貰い
  • 投資家はローリスクでリターンを得られる。

 

実は時間というのが金融の肝の1つだったりします。

 

金融の好きな人に読んで欲しいとしか言えない

この本、ノンフィクションでは言えないが事を、フィクションの世界で思う存分に書かれています。

 

金融や節税の話も大いに興味深いですが、サスペンス、ミステリーとしても魅力的です。

 

私がざっくりとした概要を書くよりも、一度読んで同じ体験をして欲しい思います。

マネーロンダリング (幻冬舎文庫)