晩年のニュートンは贋金と戦っていた

ニュートンとはどんな人でしょう。

 

木から落ちるリンゴを見て万有引力を思い付いた人でしょ

 

ニュートンといえば、この逸話が有名ですね

 

ニュートンはアインシュタインと同じような凄い科学者、というイメージではないでしょうか。

 

そのイメージはもちろん正しく、現代まで続く自然科学を創り出した偉人です。

 

しかし、晩年のニュートンは研究から一時離れ、少し変わった仕事をしていました

 

ニュートンは財務大臣から斡旋を受け、イギリス王立造幣局の監事を務めていたのです。

 

当時のイギリスは銀貨の流出と贋金に悩まされており、ニュートンは持ち前の分析力を駆使して問題に取り組んでいました。

 

たぶん教科書では習わないような話、聞いていきませんか?

 

ニュートンと贋金づくり

今回の記事はこの本を参考しています。

ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪

 

16世紀末のイギリスは2つの問題に悩む

ニュートンが造幣局の監事となった時、イギリスの貨幣は2つの問題に直面していました。

 

①良貨と悪貨が混在している

この時期のイギリスでは次の2種類の貨幣が流通していました。

 

  • 手作業で鋳造された古い通貨
  • 機械で鋳造した新しい通貨

 

手作業で鋳造された通貨は、特別な加工がされていないため、外側を削り取られていたりもします。

 

同じ額面の通貨であっても金属としての価値がばらばらになっています。

 

反対に新しい通貨は削り取り防止の加工がされているため、金属としての価値も保証されます。

 

すると、新しい通貨は価値が高いため使われず、質の悪い古い通貨ばかりが流通していました。

 

②銀貨の流出

この時期のイギリスでは銀貨の流出が問題となっていました。

 

流出した原因は、金と銀の交換比率の差です。

 

この時期、イングランドとヨーロッパでは金と銀の交換比率が異なっていました。

 

イングランドよりもヨーロッパの方が銀の価値が高かったため、イギリスの銀貨はヨーロッパへと持ち込まれ、金へと交換されてしまいます。

 

そして、得られた金を再びイングランドへ持ち込んで銀貨へと交換する事で無限に儲ける事ができたのです。

 

この時期、イギリスの銀貨(銀塊)はフランスやオランダの金属商へと大量に持ち込まれていました。

 

イギリスでは銀貨が流出してしまうため、貨幣でまともに売買をする事すら困難になってしまっています。

 

造幣局監事としても優秀だったニュートン

ニュートンが監事となった時、造幣局では古い貨幣の改鋳のため、大量の貨幣の鋳造を進めていました。

 

しかし、造幣局のトップがいい加減だったため改鋳は進まず、国内から銀貨が消えて混乱が起こるほどでした。

 

監事となったニュートンは鋳造プロセスを分析して、鋳造量を格段に上げていきます。

 

  • 八台の圧延機と五台のプレス機の新調
  • 時間動作研究
  • 各工程での必要人数の調査
  • 連続作業可能な速度の研究

 

最終的に、1分間に50回から55回の速度なら、数時間連続で打刻できる事を突き止めました。

 

ニュートンの尽力により、当初1週間に1万5千ポンドを製造するのもやっとだったのが、週に5万ポンドの製造できるまでに改善されています。

 

贋金づくりとの戦い

宿敵はウィリアム・チャロナー

ニュートンが長い期間をかけて追い詰めたのはウィリアム・チャロナーという悪党だ。

 

チャロナーは貧民の出身でロンドンに流れ着き、釘製造や染色の下働きをして、技術を磨いていく。

 

贋金を作る技術もさる事ながら、チャロナーが得意なのは尻尾を見せない事だ。

 

贋金の製造は極力他人に見せず、贋金だけを協力者に渡して流通させていた。

 

反逆罪となる贋金製造の証拠を残さず、流通させるという狡猾な人物であった。

 

また、大胆な行動を取る人物でもあり、贋金造りの知識を活かし、造幣局の問題点を直訴する事で自ら造幣局に入り込もうともしている。

 

贋金も硬貨から紙幣へ

当時、王立イングランド銀行が設立され、それに伴って銀行が貨幣の代わりとなる小切手を発行し始めた。

 

銀行に持っていけば貨幣と交換できるのだが、これが紙幣の流通へと繋がっていく。

 

宝くじ(モルトくじ)を偽造

紙幣が流通する中、イングランドは戦争費用を捻出するため、一風変わった宝くじを発行する。

 

モルトくじと呼ばれるのだが、これは外れくじでも国債のように利息が貰える、そして通貨として使用できるという代物であった。

 

チャロナーが有罪となるキッカケは、このモルトくじの偽造であった。

 

チャロナーは見事な金型を作ってモルトくじの贋金を製造する。

 

そして、仲間を使って贋金を流そうとするのだが、この仲間は買収されていて話が筒抜けになっていたのだ。

 

モルトくじの偽造の容疑でチャロナーが拘留される間に、ニュートンは過去の事件も細かく調べ、チャロナーの悪事を知る証言者を次々に尋問している。

 

現状の証拠では決め手にかけると考えたニュートンは、過去の犯罪の証言まで寄せ集めて有罪を勝ち取ろうとしたのだ。

 

裁判では、多数の証言者が呼ばれ、過去の無数の犯罪の証言を寄せ集める事で、見事チャロナーを有罪へと導いている。

ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪

ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪